【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第68章 ◇第六十七話◇シュトレンと恋心【恋の行方編】
「あ~ぁ…、あのチーズ、美味しかったのになぁ。」
口いっぱいに広がる甘酸っぱいフルーツとチーズの味が忘れられず、私は不服気に口を尖らせた。
私の声なんて聞こえていないと言う顔のリヴァイ兵長が持ってくれている袋の中には、たんこぶを作ったゲルガーさんが真剣に選んだ美味しいお酒が入っている。
お使いで酒屋の店主と親しくなっていたことで、値段を安くしてもらえた私は、そのおかげで拳骨を貰うことはなかったけれど、ゲルガーさんは痛そうなのを一発頂いていた。
そして、たまたま酒屋で会って声をかけてきた知り合いの駐屯兵の元に逃げるように去っていった。
どうやら、以前から外門そばにいる巨人のことで相談を受けていたらしい。
「お菓子はどこで買いましょうね。まさかお休みなんて。」
酒屋に行く前、兵団ご用達の菓子店に寄ったのだけれど、今日から旅行で数日臨時休業をするという貼紙があったのだ。
お菓子とお酒を買ってくるようにとエルヴィン団長から指示されているし、どこか美味しいお菓子屋はないか通りを目を凝らしてみているのだけれど、そもそも巨人襲来によって崩壊したトロスト区では、営業している店を探す方が難しい。
「適当な店で適当に見繕え。」
またリヴァイ兵長は勝手なことを言っている。
見張りだけだから適当に言えるのだ。
リヴァイ兵長に気づかれないように、私は小さなため息をこぼした。
こうしてリヴァイ兵長と二人きりでトロスト区を歩くのは、2回目だ。
ハンジさんに親睦を深めろと言われて、初めてリヴァイ兵長と一緒にトロスト区に来たときは、人類最強の兵士との休日なんて最悪だと思った。
もう二度と御免だ、そう思っていたのにー。
横目でこっそり見たリヴァイ兵長の横顔は、いつもと何も変わらない。
適当なお菓子屋を探している気配すら、ない。