【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第67章 ◇第六十六話◇ただの上司と部下【恋の行方編】
「入るぞ。」
それは許可なのか、宣言なのか。
声と共に部屋に足を踏み入れたのはリヴァイ兵長だった。
ローテーブルで書類仕事中の姿の私とモブリットさんを見つけてもあまり驚いた顔をしなかったから、ここにいるのがハンジさんだけではないことは知っていたのかもしれない。
こうして、仕事中にバッタリ顔を合わせてしまうのはとても久しぶりな気がして、やっぱり避けられていたんだと改めて実感する。
チクリと胸が痛んだ。
でも、昨日までと違うのは、私がいることに気がついても、リヴァイ兵長が背を向けないということだ。
これはもう避けられていないという証拠なのだから、喜ぶべきだ。
私はやっと、ただの部下という名前を取り戻せたのだからー。
「エルヴィンからだ。」
ハンジさんのデスクの前に立ったリヴァイ兵長は、そう言って手紙のようなものを差し出した。
だが、ハンジさんは、幽霊でも見るような顔でリヴァイ兵長を見ていて、口を開けたまま動かない。
「おい、聞いてんのか。」
「…。」
「おいっ、クソ眼鏡っ。」
「…!あ…っ、ごめん。ごめんっ、何だっけ?」
リヴァイ兵長が少し声を大きめに呼ぶと、ハンジさんはやっとハッとして、意識が戻ってきたようだった。
でも、何も聞いてはいなかったらしく、リヴァイ兵長にため息を吐かせていた。
「エルヴィンに届いた手紙を持ってきた。ハンジも読んでおけ、だそうだ。
とにかく、エルヴィンから警戒しろと言われてる。
お前も、目を離さず見張っとけ。」
「あぁ、分かってる。そのつもりだよ。」
「なら、いいが。」
リヴァイ兵長はそう言うと、振り返った。
そして、私と目が合うと口を開いた。
「昼飯はしっかり食ったんだろうな。」
「はい。さっき、ハンジさん達と一緒に頂きました。完食です!」
「ならいい。」
私の答えに満足したのか、リヴァイ兵長は、もう一度、何かを見張るようにハンジさんに釘を刺した後、部屋を出て行った。
だから、仕事を再開しようと資料に視線を移そうとして、ハンジさんとモブリットさんが私を見ていることに気が付いた。