【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第62章 ◇第六十一話◇閉じるしかなった心の扉【恋の行方編】
一度はアニもそれで納得しようとしてくれたようだったけれど、紅茶を口に運ぼうとしてやめると、私に訊ねてきた。
「巨人化出来る人間がエレン以外にもいるかもしれないって、
調査兵団は思ってるってこと?」
「まさかっ!そんなわけわかんないこと思ったのは私だけだよ。
そんな話、エルヴィン団長達から聞いたことないもの。」
「へぇ。さすが、バカなアンタだけあるね。」
「失礼なんだけど、すごく。」
じとーっとした目で見ると、アニが困ったよな笑みを隠すように紅茶を口に運んだ。
そして、ローテーブルにティーカップを置いてから、ゆっくりと口を開いた。
「ねぇ。」
「んー?」
「たとえば、あの地獄を作ったのが巨人化出来る人間だったら、
アンタはどうする?」
突然そんなことを訊ねてきたアニは、自分がローテーブルに置いたティーカップをじーっと見つめていた。
私が変なことを言ってしまったから、気になったのだろうか。
でも、その質問の答えなら決まっている。
きっと、人類皆同じだー。
「許さない。」
自分でも驚くほどに、冷たく地を這う声だった。
あぁ、私も巨人を恨んでいるのだと、改めて実感してしまうほどー。
アニも私の冷たい声に驚いたのかもしれない。
目を見開いて、口を開いたまま言葉を発しない彼女に、私は続けた。
「私の親友は超大型巨人が蹴った瓦礫に身体を潰されて死んだ。
調査兵で出逢った親友は私を助けるために巨人に喰われた。
もし、そのすべてが理性のある人間の仕業なら、私は絶対に許さない。」
「…そうだよね。許さないよね。アタシもだよ。
頭のおかしい奴らは許さない。絶対に。」
アニは握りしめた拳を睨みつけながら、酷く憎そうに声を押し出した。
彼女にも、巨人を恨む何か理由があるのかもしれない。
憲兵になったのは自分のためだと言っていたけれど、それも今彼女を苦しめている何かと関係があるのかもしれない。
そう思ったけれど、それを訊ねることは出来ない。
アニはそれを話したくなさそうだし、誰にも触れてほしくないところはあると思うからー。
こんな混沌とした世の中なら、尚更だー。