【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第59章 ◇第五十八話◇眠り姫と不器用な王子様【恋の行方編】
だからきっと、自分がエスコート役に選ばれたのにも意味があるのだろうとナナバは考えていた。
「それで、真面目に聞こう。
何か問題はなかったか。シャイセ伯爵の息子から因縁をつけられていたようだが。」
「あの息子なら言って聞かせれば分かるので問題ないのですが、
他に気になる男が1人。」
「ほう…、どんな男だ。」
「貴族のようでした。他の貴族の女性達が彼のまわりを囲んでいたのですが、
ずっとを見ていたんです。睨むというよりも…、なんというか
執念みたいなものを感じて、私ですら恐ろしかったですね。」
「は気づいていたのか?」
「いえ、出来るだけその男の目に触れないように、
私がずっとを背中で隠していたので、彼女は気づいてないと思います。」
「そうか、それは助かる。」
「もしかして、心当たりがおありですか?」
「あぁ、1人、気になる男がいる。」
「そうですか…。何か悪い予感がします。あの男、絶対にに接触してくるはずです。
心当たりがあるのなら、早めに手を打っておいた方が良いのでは?」
「その通りなのだが…、今は、まずはー。」
「まずは、リヴァイですか。」
ナナバから出てきた名前に、エルヴィンは驚いたようだった。
だが、ナナバだって、リヴァイとはそれなりに長い付き合いだ。彼の様子が最近おかしいことくらい気が付いている。
それと同時期にから笑顔が消えたということにも気づくくらいは、彼女のことも気に掛けているのだ。
「まぁ、どうにかするさ。」
エルヴィンはそう言うが、どうも信じられない。
だってー。
「失礼を承知で申し上げますが、
エルヴィン団長もリヴァイも、そういうことにはひどく不得手だと見えるので
とても不安なのですが。」
「…大丈夫だ。」
絶対に、大丈夫じゃない。
ナナバは苦笑いをして、何も知らずに無防備に眠る調査兵団のお姫様にそっと手を伸ばす。
頬にかかる髪を耳にかけてやれば、小さく身じろぐ。
その仕草に、思わず、守ってやりたいなんて気持ちが湧きあがるから、王子様とは程遠い不器用な友人の顔を思い浮かべて、胸が苦しくなった。
調査兵達には『今』しかない。
どうか、大切な人達の『今』が幸せであるようにー。
そう願ってやまない。