【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第55章 ◇第五十四話◇魚も溺れる夜【恋の行方編】
ジャンが去った扉が、バタンッ!と音を立てて閉まる。
途端にシンと静まり返る部屋で、閉まった扉の向こうを睨みつける背中をじっと見つめていると、リヴァイ兵長がゆっくりと振り返った。
談話室では、一度だって重ならなかった切れ長の瞳が私を映す。
そこでようやく、私は自分が今どんな状態なのかを思い出した。
自分が何を見られたのかも忘れて、私は、こんなはしたない恰好を見られたくないと焦った。
でも、ボタンも外れて乱れたシャツとはだけたスカートから露になる素肌を慌てて隠そうとする私の手は、リヴァイ兵長の手に捕まってしまう。
ジャンの名残りが残る私とシーツを睨みつけるリヴァイ兵長の冷たい声が、今度は私に向けられた。
「抵抗してるようには見えなかったが、俺の見間違いか?」
「…あの、私…っ。」
「あのクソ野郎に何をさせた。あ?」
「リヴァ、兵ちょ…っ、手が、痛…っ。」
私の手首を掴むリヴァイ兵長の手に力が入って、ギリリギリリと痛みが増していく。
私が痛みに顔を歪めても、その力が弱まることはなかった。
「そんなにヤりてぇなら、おれがシてやる。」
私をギロリと睨みつけたリヴァイ兵長は、さっきまでジャンがいた私の腰の上に馬乗りになると、いきなり唇に噛みついてきた。
驚いた私の身体が、咄嗟によじって逃げようとするのを押さえつけるように、胸を鷲掴みにされる。
私の唇を貪るように、角度を変えて何度も何度も私の口内を犯すから、リヴァイ兵長が呑んでいたアルコール度数の強いお酒の味と匂いで、頭と身体がクラクラする。
「んぁ…っ。はっ。」
唇と唇の隙間を見つけて、必死に息継ぎをしようとする私をリヴァイ兵長が赦さない。
窒息死させようとしているみたいに、本当に殺そうとしているみたいに、私の唇はリヴァイ兵長の唇に塞がれた。
苦しくなって、肩で息をする私の胸はリヴァイ兵長の手に鷲掴みにされたまま。強引な唇とは裏腹に、可愛がられながら、弄ばれる。
不慣れな手つきだったジャンと違って、強弱をつけながら敏感なところを責めるその手は、女の身体をよく理解していて、こんな状況の中で、そんなことに私の心はひどく傷つけられた。