【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第55章 ◇第五十四話◇魚も溺れる夜【恋の行方編】
グラグラ、グラグラー。
揺れる頭と心が気持ち悪い。
私は小さく唸って、ぼんやり見える兵団服の胸元に顔を埋めた。
「大丈夫っすか?
フロアには着いたんで、部屋までもうすぐですよ。」
「ぅーん。」
返事にならない返事をする私に、ジャンは時々声をかけてくれた。
でも、その声すらも私の頭には痛くて、ツラい。
所謂お姫様抱っこも、好きな人じゃないとドキドキしないらしい。
私を抱える腕の感触も、埋める胸の温かさも、私が覚えてしまったそれとは違っていて、お酒で気持ちの悪い喉の奥を苦しくさせる。
今もリヴァイ兵長はジーニーとお酒を呑んでいるのだろうか。
しなだれかかったジーニーの火照った頬と胸の感触は、私よりもずっとずっと色っぽいんだろう。
だって、リヴァイ兵長はとても楽しそうに見えたからー。
「よう、新兵!
お前、こんなとこで何やってんだ?そりゃ、か?」
「本当だな、うちのじゃじゃ馬姫さんじゃねぇか。寝てんのか?」
「そういや、ゲルガーのやつが酒持ってきて呑んでるんだったな。
お~、完全に潰れてら。」
廊下ですれ違った精鋭兵が、このフロアにいるには珍しい新兵とその腕の中でグッタリしてる私に気づいて声をかけてきた。
腕の中から見上げれば、ぼんやりした視界に見覚えのある顔がいくつか私を覗き込んでいるのが確認出来た。
「ゲルガーさんにお酒呑まされまくっちまったそうです。」
「アイツならやりそうだな。」
「で、ナナバに小言言われてんだぜ。」
「そりゃ、言えてるな。」
ガハハハハと顔を見合わせて笑いあう彼らの楽しそうな声さえ、呑み過ぎた私の頭に響く。
もう一度、小さく唸ってジャンの胸元に顔を埋めた。
「さんの部屋って、この先であってますか?」
「おう、ここまっすぐ行って左側の3つめの扉だ。」
「ありがとうございます。」
ジャンは彼らに礼を言って頭を下げると、また歩き出す。
「リヴァイに見られねぇように気をつけろよ~!」
「殺されちまうぜ!」
「そりゃ、言えてるぜ!」
精鋭兵達が何かを叫んだのが聞こえた後、後ろからまたガハハハハという笑い声が響いた。
私はこんなに気持ち悪くて、吐きそうで、泣きそうなのにー。
楽しそうな彼らが羨ましい。