【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第53章 ◇第五十二話◇臆病者の夜【恋の行方編】
「すぐに包帯と消毒液を貰ってきます。」
リヴァイ兵長に背を向けて、早足で部屋を出ようとした私の腕を掴まれた。
「待て。必要ねぇ。」
振り返ると、リヴァイ兵長と目があった。
「ダメですよ。ちゃんと消毒と包帯はしなくちゃ。
医療兵にもそう言われてるんでしょう?」
「わかった。おれが行く。」
「いいですよ。私が行きますから。」
「お前はダメだ。」
「なんでですか。ちょっと貰いに行くだけじゃないですか。」
「危険だ。」
リヴァイ兵長が大真面目に言うそれに、私は一瞬キョトンとしてしまった。
危険って何を言っているのだろう。
首を傾げる私をリヴァイ兵長の力強い目が引き留めてくる。
「…今から外に包帯を買いに行くわけじゃなくて、
下の階の宿のご主人に包帯を貰いに行くだけですよ。」
確かにもう夜も遅い。
こんな時間に外に出るのは危険だろう。
でも、私はこの宿から出るつもりはない。
勘違いしたのかと思ったけれど、どうも違うようだ。
「知ってる。」
「あの、じゃあ、何も危険ではないと思うんですけど…?」
「他の部屋にどこの誰だか分からねぇ男が泊ってるんだぞ。
襲われたらどうするつもりだ。」
至極真面目に、リヴァイ兵長は言った。
当然のことを言っているつもりでいるらしい。
でもー。
「大丈夫だと思うので、行ってきます。」
話にならないと思って、私は無視して部屋を出ることに決めた。
でも、リヴァイ兵長は掴んでいた腕を離さずに、グイッと後ろに引いた。
私の身体は、前に進めずに後ろに後ずさりながら、ソファに尻もちをつく。
結果としてソファに座ってしまった私の代わりに、リヴァイ兵長は立ち上がった。
「お前は絶対にこの部屋を出るな。」
厳しい目でそう言ったリヴァイ兵長は、呆気にとられる私を残して部屋を出て行った。
上半身裸なのにー。