【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第39章 ◇第三十八話◇仇【調査兵団入団編】
幸せを形にしたような家族を見たあの日から数週間しか経っていないのに、彼らは数十歳老け、人生に疲れ果て、世界に絶望した老人になっていた。
目に入れても痛くない娘の死が、短期間で彼らをここまで変えたのかー。
「お前が!!ルルを調査兵団なんて馬鹿げた兵団に入れなければっ!!
あの子は今も私達の元にいたんだッ!!
親を残して死ぬような、そんな親不孝な娘じゃなかったのに!!アンタらがッ!!!」
彼らが顔を真っ赤にして自分を罵倒する理由を、ハンジはようやく理解した。
数か月前までは駐屯兵団に所属していたはずの娘が、調査兵団に入団してわずか1か月で戦死したとなれば、戸惑い、悲しみ、そして怒りが彼らを支配しても不思議なことではない。
いや、むしろ、自然な感情の流れだろう。
「娘さんのことは、我々がついていながら本当に申し訳ございませんでした。」
ハンジは身体を綺麗に折り曲げ、頭を下げた。
こんなに素直に謝るとは思わなかったのだろう、クレーデル夫妻は一瞬たじろいだが、すぐにまた無能な上官だと罵りだした。
「分隊長っ!やめてくださいっ!」
「あなたが頭を下げてしまったらっ!!」
モブリット達が必死にハンジの頭を上げようとしたが、それでも低く垂れさがった頭が上がることはなかった。
その頭が上がったのは、クレーデル夫妻から別の兵士の名前が出た時だった。
「アンタはもういいッ!とにかく早く・という兵士を出せッ!!
ソイツがルルを殺したことは分かってるんだッ!!!」
ルルの父親が怒鳴りながら発したその言葉は、ハンジにとっていろんな意味で衝撃的だった。