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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第39章 ◇第三十八話◇仇【調査兵団入団編】


あのとき、テュランが巨人の大群が拠点へ向かっていることに気づかなかったら、犠牲は免れなかっただろう。

「ルルの遺体をリヴァイが連れてきてることにも気づいてなかったくらいだから、
 あれだけの巨人の大群に襲われて犠牲が全く出なかったことに
 自分が大きく貢献してるってことにも気づいてないんだろうね。」
「それ以前の問題だよ、ナナバ。
 はあの日、犠牲が出なかったことすら分かっていないはずだ。
 あの目は、何も見ていなかったから…。」

は、誰も死なせない兵士になるためにいつもひとりで必死に戦っていた。
それでも壁外任務で犠牲が出てしまうと、自主練をして、どうすれば助けられたのかを必死に考えているようだった。
帰還直前、急に走り出したテュランとそれを止めようともしないの後ろ姿が蘇る。
そして、絶望しそうなくらいの巨人の大群。
それを見つけた途端に飛び上がった小さな背中、そこに大きな翼が生えているように見えた。
巨人の血が舞い、彼女の姿を真っ赤に染めていく。
必死の形相で巨人のうなじを削ぎ大きな腹を割く彼女は、本の中だけに存在する悪魔のように身の毛もよだつほどに恐ろしく、頬を伝う巨人の赤い血は悪魔の涙のようでもの悲しくもあった。
白い蒸気がそんな彼女を包み込んで、とても幻想的に見えたのだ。
だから一緒に巨人と戦うという使命も忘れて、ハンジはただぼんやりと真っ赤に舞うの姿を見上げていた。
それからすぐに追いついたゲルガー達が巨人の群れの中で呆然としているを助けたけれど、心までは救えなかった。
巨人の群れを仲間のもとに連れてくるという大失態を起こした兵士達は全員、エルヴィンから盛大に叱られた。
そう、全員がエルヴィンのお叱りを受けることが出来た。誰も死ななかったのだ。
途中から討伐に参加した精鋭兵達は『そもそも巨人の大群なんてなかった、そこにあったのは、大量の巨人の死体と数体の巨人、そして、勇敢な兵士だけだった』と口を揃えた。
奇しくもあの日、誰も死なせない兵士への道にほんの少しだけれど光が差したのだ。
でも、はそんなこと、知りもしないのだろう。
そして、自分が友人を殺したという呪いだけを胸に残して、一生苦しむのだろうか。
そうして、誰も死なせない兵士はこの先ずっと姿を消すのか。
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