【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第37章 ◇第三十六話◇兵士達【調査兵団入団編】
太陽の気配を薄っすらと感じ始めた夜明け前、調査兵団の兵士達は身支度を終え、帰還の準備始めていた。
慣れというのは怖いもので、あれからの記憶が曖昧な私でさえも、装備に手間のかかる立体起動装置も装着し終え、テュランの背の上でエルヴィン団長の帰還合図を待っていた。
テュランが急に大きな声で鳴いたのは、そんな時だった。
驚く私を背に乗せたまま、テュランは猛スピードで走りだす。
「え!?!!どこに行くんだっ!?」
後ろから、驚いているハンジさんの声がしたけれど、そんなことで勢いづいているテュランが立ち止まってくれるわけもなかった。
私は振り落とされないように鬣に必死にしがみつきながら、何かを期待していた気がする。
それが何かは分からなかったけれど、このままテュランの好きなようにやらせれば、私の望む場所に連れて行ってくれる気がした。
だって、テュランが向かっているのは、巨大樹の森のある方向だったから。
だから、後ろから、私とテュランを追いかけてくるハンジさんやモブリットさん達の声がするけれど、手綱を引こうとは思わなかった。
そして、こちらに向かって走ってきている多数の巨人の群れを遠くに確認したとき、私の望む何かの正体が分かった気がした。
巨人の群れを率いているのは、馬に乗った数名の兵士達だった。
調査兵団の兵士達が帰還の準備をしているはずの今、彼らがなぜ巨大樹の森の方向から走ってきているのかは分からない。
でも、馬のスピードが落ちて巨人に捕まるリスクを理解しているはずの彼らが、背中に背負うもう二度と戦うことのない兵士を振り落とさない理由ならば、嫌というほどに理解出来た。
(あぁ、そうか…。私は…。)
今、ハッキリ分かった。
私は、ルルと帰りたいのだ。
特別なことなんて、何も望んでいない。
ただ、一緒に兵舎に戻って、シャワーを浴びて、食事をして、普通の生活がしたい。
聞いてほしいこともたくさんあるし、ルルの話だって幾らでも聞きたい。
私はー。