【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第34章 ◇第三十三話◇酔っぱらいの願い【調査兵団入団編】
最後に残った瓶を拾おうとしていたリヴァイ兵長は手を止め、目を見開いていて、明らかに驚いている。
バカだ。
そんなの夢に決まってるのに。
私の願望が見せた、ただの夢に決まってるのに。
「さぁな。酔ってて覚えてねぇな。
お前が夢だと思うなら、そうなんじゃねぇのか。」
どうやって誤魔化そうかと思案してる間に、リヴァイ兵長はそう言って、最後の瓶を拾い上げた。
「そう…、ですか。きっと、私の夢ですね。
ごめんなさい。変なこと言って。」
私は頬をかいて、笑って誤魔化した。
恥ずかしさで死にそうで、顔は見られなかった。
「おれが先に行く。お前は少ししてから来い。」
「…はい。」
2人で時計台から降りてきたら、面倒なことになるからだと分かっている。
変な勘繰りをされても困るし、勘違いされたくないのだと言うことも分かる。
でも、去っていこうとするリヴァイ兵長の背中に拒絶されたみたいで、ショックだった。
「どうせ、昨日の夜に自分が何を言ったかも覚えてねぇんだろ。」
歩き出そうとした足を止めて、リヴァイ兵長が振り向いた。
いつもと変わらない切れ長の瞳。
突然、そんなことを言いだした真意は、私には分からない。
責めるような口調だったけれど、怒っている風でもない。
ただどこか、諦めたような投げやりな言い方だった。
「…私、失礼なこと言いましたか?」
不安になって訊ねた私に、リヴァイ兵長は首をすくめた。
「教えといてやる。
おれは惚れてもねぇ女には手を出さねぇ。
酔っぱらってても、それくらいの分別はつく。」
リヴァイ兵長はそれだけ言って、時計台から下りて行った。
取り残された時計台で、私はリヴァイ兵長が残した言葉の意味をひたすら考えていた。
リヴァイ兵長への恋は諦めると決めた心が、私に甘い願いを伝えてくる。
必死に抗おうとする恋心に胸が苦しくなった。