【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第34章 ◇第三十三話◇酔っぱらいの願い【調査兵団入団編】
「私は…、黒い翼になりたい。
リヴァイ兵長の…翼になりたい…。」
好きだとも言えない、恋を諦めると決めて、リヴァイ兵長と誰かの恋をとやかく言う権利もない私の精一杯の願い。
死んでからでいいから、叶って欲しい願い。
リヴァイ兵長のマントの上で、白と黒の翼が、気持ちよさそうに夜風に揺れている。
彼は、たったひとつだってこぼさないように大切に大切に、願いのすべてを乗せて、自由を求めて空を飛んでいる。
この人の背中に乗って空を飛んだら、どんな景色が見えるのだろう。
「私が死んだらー。」
「くだらねぇこと言ってねぇで、死なねぇように訓練に励め。」
「知らないんですか?私は…リヴァイ兵長より、先に死ぬんです。」
「…かもな。」
「かもじゃなくて、絶対にー。」
「もう分かった、酔っ払い。
いい加減そのうるせぇ口を黙らさねぇと削ぐぞ。」
「約束してくださいっ。私が死んでもっ、一緒に空を飛んでくれるってっ!」
リヴァイ兵長の目を見て懇願する。
私はまた一つ、重たい荷物を彼の背中に乗せようとしている。
しかもそれは、彼が望んで乗せたものではなくて、優しい彼が断われずに受け止めたもので。
それでも構わないと思う私は、本当に自分勝手なんだろう。
それとも、お酒のせいかな。
お酒のせいなら、いいのにー。
「…っ、あぁ、約束する。」
一度、何かを言いかけたリヴァイ兵長だったけれど、私から目を反らす代わりに、了承の言葉をくれた。
ズキリ、痛んだのは、私の胸かな。リヴァイ兵長の胸の痛みだったのかな。
「よかった…。」
リヴァイ兵長の背中で揺れる自由の翼に触れると、温かい熱が伝わってきた。
死んだら、こうして触れることも出来なくなるのか。
「見てるだけでいいとか…そんなの嘘なんです…。
本当は…、声を聞きたいし、触れたいし、触れてほしい…。」
リヴァイ兵長の背中を撫でる手だけが、ゆっくりと温まっていく。
そこから、心の声が漏れていく。
「リヴァイ兵長…。」
「今度はなんだ。クソの世話はするつもりはねぇぞ。」
「もう…、私を苦しめないで…。」
「おい、俺がお前に何をしたってー。」
フッと意識が飛んで、私は前のめりに倒れこんでいた。
お気に入りの枕みたいに柔らかくはないし、むしろ硬いけど、痛くはなくて、なんだか懐かしい感触。
不思議と、すごく安心する。