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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第32章 ◇第三十一話◇壁外調査初日の洗礼【調査兵団入団編】


「あれは…!」

ハンジさんが、マズいという顔をした。
煙弾が上がったのは右前方。
しかも、色は赤でも黒でもなく、紫。
緊急事態を示す煙弾だ。その直後、同じ場所から今度は黄色の煙弾が上がった。

「黄色って…!」
「作戦遂行不能、右翼前方が潰れたか。」

ハンジさんが難しい顔をして言う。
もう黙ってはいられなかった。

「離脱します!!」

テュランのお腹を蹴ると、勢いよく右前方に駆け出した。
気持ちは同じだと思いたい。
後ろから、私の名前を呼ぶ班員の声はしたけれど、意外とハンジさんの声はしなかった。

「!!…私も行きます。は私に任せてください。」
「頼んだよ、ルル。は私の希望なんだ。」
「はいっ!」

ルルが私を追いかける前に、交わされた会話を私は知らない。
でも、追いついた彼女に気づき、危険だから戻るように咎めようとした私に、共犯だと口の端を上げた彼女の覚悟ならすぐに理解できた。

「よし、一緒に行こう!手伝ってっ‼」
「もちろんっ!」

私達は、黄色の煙弾が上がった方向へと最高速度で馬を走らせた。
その先には巨人がいるのに、黄色の煙弾に近づけば近づくほどどんどん力が湧いてきて、恐怖が消えていくのが不思議だった。
きっと、私たちが近づいて行っているのは、恐ろしい巨人ではなくて、仲間の明日の命だと信じていたからだろう。

「分隊長、いいんですか?行かせてしまって。」
「あっちはミケも近くにいるから大丈夫だよ。」
「でも…!2人はまだ経験が浅いですっ!想定外に対応できるとは思えません。」
「死ぬような訓練をは越えてきたんだ。誰も死なせない兵士になるためにね。」
「そんな…‼無理です、そんなの!」
「家族のために嫌々なった調査兵で、が見つけた意味を誰にも奪えないよ。
 それに、私は、ルルの覚悟も知ってる。
 ここであの娘達を止めたら、命を亡くす前に兵士として死んでしまう。」
「…分かりました。あなたと2人を信じましょう。」
「そうだね、信じよう。」

ハンジ班は、2人の背中が消えた右前方を見送った後、前を向いて走り続けていた。
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