【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第3章 ◇第二話◇不本意な兵士達の戦い【調査兵団入団編】
誤解を解かなければ―。
そう思って、焦れば焦るほど、聞く耳を持たない上に我の強い兵士のペースに押されていた。
そして、気づいた時には、完璧に立体起動装置と超硬質スチールを装備し、駐屯兵団と訓練兵の兵士達と一緒に整列していた。
(どうしよう…。どうなるんだろう…。)
巨人と真っ向から戦い、地獄を見てきたのであろう兵士達の生気のない顔がすぐ隣にある状況で、私はずっと、頭の中でそればかりを繰り返している。
この整列の中から、駐屯兵団の制服を着た私が抜けだせば、敵前逃亡の兵士にしか見えないことは嫌でもわかる。
兵士でもなんでもないのに、どうしてこんなところにいるんだろう。
これから強制させられるかもしれない巨人との対戦を前にして、小刻みに震える身体を抑えることも忘れて、私はまた、頭の中で、どうしようとそればかりを繰り返す。
訓練兵の若い兵士が、巨人に食われて死ぬよりは、敵前逃亡で死罪になる方がマシだと泣き言を叫んだ。
すると、周りにいた訓練兵や駐屯兵も一緒になって、逃げたいと騒ぎだした。
この騒ぎに便乗して、自分も逃げられないだろうか。
だが、そんな僅かな希望もピクシス司令の大きな声に打ち消されてしまった。
「これよりトロスト区奪還作戦について説明する!!」
壁の上に立ったピクシス司令の思いもよらない宣言に、騒いでいた兵士達が目を見開いた。
どうやって―。
真っ青な兵士達が口々にこぼすそれに答えるように、ピクシス司令は、トロスト区奪還作戦についての説明を始めた。
頭が混乱してよく理解できなかったけれど、おそらく彼はこう言ったんだと思う。
『巨人化できる訓練兵が、巨人になって大きな岩を持ち上げて、超大型巨人に開けられた穴を塞ぐ。
その間、兵士達は巨人化した訓練兵を守るために、囮になって死んでくれ。』
誰がそんな途方もない話を信じるだろう。受け入れるだろう。
まず、言っている意味を理解することすら無理だ。
当然、兵士達は、そんなわけの分からない作戦には参加できないと騒ぎ出した。
そして、敵前逃亡の意思がある兵士達が、死ぬ前に家族に会いたい、恋人に会いたい、と逃げていく。
こんなにバラバラの兵団が巨人を倒し、トロスト区奪還などできるはずがない。
でも、これはチャンスだとも思った。
敵前逃亡の兵士達に混ざって、家族のもとへ向かえばいいのだ。