【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第24章 ◇第二十三話◇残った貴方の跡は【調査兵団入団編】
割れたティーカップの後始末をペトラに頼んだリヴァイ兵長は、私を医務室に連れて行った。
ここにきてから私はずっと、消毒をした指に包帯を巻くリヴァイ兵長の器用な手の動きを、ただじっと見ている。
そうしないと、少し切っただけの指先に大げさに施されていく処置に、胸の痛さと共に恥ずかしさが爆発しそうだったから。
「いつからいたんだ。」
「え?」
傷口のことを聞いてからは、ずっと黙って処置をしていたリヴァイ兵長が急に口を開くから驚いた。
「…いや、なんでもねぇ。」
リヴァイ兵長はそれだけ言うと、私が指を動かしてしまったせいでズレてしまった包帯を綺麗に巻き直し始めた。
「そう、ですか…。」
急に喋りだすリヴァイ兵長に驚いて答えられなかったけれど、何を訊ねられたのかは聞こえていた。
でも、私も、それ以上は追及せずに口を閉ざした。
それからもお互いに何か話すわけでもなく、リヴァイ兵長はただただ丁寧に包帯を巻いてくれた。
私はそんなリヴァイ兵長の手をひたすらに見つめながら、頭の中に蘇るイメージを必死に消そうと戦っていた。
傷に触らないようにそっと優しく触れるリヴァイ兵長のこの手は、少し前までは恋人のためだけにあったこととか―。