【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第24章 ◇第二十三話◇残った貴方の跡は【調査兵団入団編】
現実から目を逸らしたかった。
でも、急いでこの場から離れたかった私が勢いよく後ろを向こうとしたせいで、壁にティーカップをぶつけてしまった。
あ!と思ったときには、大きな音を立てた後、ティーカップは床に落ちて粉々に割れてしまった。
慌てて座り込んで、割れたティーカップに手を伸ばす。
気づかないでほしい、なんて思うのも愚かだということは分かっていた。
「?」
可愛らしい声。
優しく私の名前を呼んだのは、ペトラだった。
歩み寄ってきたペトラとリヴァイ兵長の足元が視界に入ってくる。
でも、顔を上げることは出来なかった。
情けない顔を、2人には見せたくなかったから―。
「驚かせてごめんなさいっ。」
慌てて謝りながら、私は床に散らばったティーカップの破片を拾う。
こんなに惨めなことって今までの人生であったかな、なんて考えてしまって、尚更惨めになる。
自分が不憫で愚かで。
破片を拾う指先が震えるー。
「そのティーカップって私達の?」
「あ、2人がいるの知らなくて、誰かが置いて行ったと思って
片付けようと思って。大丈夫、何も見てないし、誰にも言わないし。
だから、私のことなんて気にしな・・・・っ、痛っ!」
早口で言い訳をまくし立てた私は、この場から逃げ出したい気持ちが先走ってティーカップの破片で指を切ってしまった。
プツリと小さく空いた穴から、血が流れ出てくる。
今の私の心にも、たぶんこれと同じくらい小さな傷が出来ている。
でも、それは本当に小さくて、流れ出る血なんてものはなくて、明日には平気だと笑えるくらいの―。