【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第164章 ◇第百六十三話◇勝利の女神に敬礼を【運命の決戦編】
エレンの家の地下室で眠っていたこの世界の秘密、そして、ベルトルトとライナーが語った向こうの世界の話は、エルヴィンが長い間探し続けた夢そのものだった。
そして、絶望だったー。
それでも、トロスト区へ帰還した調査兵団の一行が連れて帰ったのは、この世界の人類の大勝利に違いなかった。
そしてそれは、なくしては手に入らなかっただろうー。
「ご両親のところに行くのかい。」
兵門前で新聞記者の取材に応じていたハンジは、兵舎を出て行こうとするリヴァイを見つけて声をかけた。
馬で帰るときもずっと、リヴァイはの亡骸を腕の中から決して放さなかった。
だが、兵舎に戻った後は、他の犠牲になった調査兵達の亡骸と同じように、医療棟にある安置所に寝かせたようだった。
棺の用意が出来次第、彼らは家族の元へ帰ることになる。
でもその前に、人類の勝利のために戦った彼らの勇姿を家族や友人に伝えなければならないー。
「あぁ。」
リヴァイはほんの一瞬だけハンジに視線を送った後、短く返事をしてまた歩き出した。
その後ろを、数名の新兵達が追いかけて、彼の名前を呼んで引き留めた。
振り返ったリヴァイに、新兵を引き連れたマルコが懇願するように言う。
「俺達も、一緒に行かせてください。」
「…必要ねぇ。俺1人で行く。」
「お願いです!俺達はすぐ目の前でさんの勇姿を見ていました。
彼女が、俺達の命を守ってくれた…!それをしっかりと伝えないといけないんです!
さんの命はちゃんと…、俺達に繋がってることを、ご両親に伝えなければ…!!」
マルロは拳を握りしめ、真っすぐにリヴァイを見据えた。
彼の目はまだ真っ赤だったけれど、涙は流れていなかった。
そこにあったのは、の意志を受け継ごうという強い使命感と覚悟だ。
リヴァイが返事をしかねている間に、まるでその時を待っていたみたいに新兵達が続々と集まってくる。
エレンやアルミン達もやってきて、リヴァイに一緒に連れて行ってくれと懇願する。
「リヴァイ、私も行かせてくれ。」
エルヴィンまでやって来て、リヴァイはついに頷くしかなくなった。
兵門の前、集まったのは、生き残った調査兵のほとんどすべてだった。