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化け猫の涙

第1章 じいちゃんと招き猫


その昔、柿崎六郎は戦後、行商をしていた時にとある骨董屋である招き猫を見付けた。

「お主、見る目があるのう…
その招き猫は、昔悪さばかりする化け猫だったという…
それを名のある和尚が改心させ、この招き猫になったそうな…」

骨董屋の年老いた店主は、ニヤリとしながら、そう六郎に話した。

「そんな事…」

ある訳が無いと六郎が言おうとしたら、どこからか鈴の音が聞こえきた。六郎は店内を見回したが鈴らしき物はなく、招き猫の首飾りから聞こえていた。その招き猫に不思議な力を感じた六郎は、買って大事に抱えて帰った。

その後、六郎は行商からこの町に『柿崎商店』を構え、骨董屋で買った招き猫を置いた。店は戦後の復興から日本は高度成長期を迎え、右肩上がりで大きくなっていく。その間、招き猫はずっと店に置かれていたが、バブル景気に乗じ店を拡大した時に社員から古びた招き猫は新しい店に似つかわしくないと押し切られ店から撤去された。招き猫は六郎が家に持ち帰り、物置にしまわれ、二度と店に置かれる事はなかった。

バブル景気は終焉を迎え、バブル崩壊の大波は柿崎商店も飲み込み、六郎は店や家を売り渡した。六郎は借金を背負ったが、その借金を返済し終えた頃に孫の柿崎健治が生まれた。
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