【金城剛士】超感でぃすてにー【B-project】
第3章 秋
すっかり秋。エントランスの落ち葉を掃除していると、剛士くんが出てきた。
「おはようございます」
「…はよ。」
なにか躊躇ったように間を置くと、差し出されたのは2枚のチケット。
「…やる」
「?ありがとう…これ、私の好きなバンドのライブチケット…」
「……俺、もう行くから」
「待って!これ、一緒に行こうよ!」
「ん。当日11時にエントランスな。」
「わーい!ありがとう!」
嬉しいなー。10年前でも大人気のバンド。ライブに行くなんて久しぶり。
しかも、剛士くんがくれるなんて。今日は良い日だな。
「ゆかり」
急に抱き着かれた。香水のかおり。
「なにかいいことあった?嬉しそう。」
「ちょっとね。というか、クビになるから、抱きつかないでっ。」
大袈裟に暴れるとさらに腕の力を強められる。
「剛士とデート?妬けちゃうな。」
「見てたの……てか少年とオバサンじゃデートにならないって。」
「俺ともデートしてよ。」
デートって…紛らわしい言い方。でもわざわざ私に言うなんて、なにか用事でもあるのかな?
「荷物持ちくらいなら力になれますよ。」
「え?OKなの?やった。」
寮母さんやるって決めたからね。少年たちの力になるんだ。