ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第9章 夏の夜の話
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自転車のチェーンがカシャカシャと鳴る
運転している彼からは少し花火の名残が香った
控え目に回していた腕にぎゅっと力を込めれば薄いTシャツ越しに逞しい身体を感じて心臓が跳ね上がる
私がそうしていたのは恥ずかしく成ってほんの一瞬だったけどバクバクと鳴る心音
平凡な住宅街を自転車で彼と二人乗りしているなんて夢みたいだ
そんな日が来るなんて想像も出来なかった今の瞬間を噛み締める
「コンビニ寄ってく?」
「いえ、私は大丈夫です!」
そのまま角のコンビニをスルーした自転車は私達のアパートへと向かう
本当に些細で何でもない日常がこんなにも愛しいなんて思いもしなかった
賑やかなチェーンの音に耳を傾けながら風が頬を撫でる静かな夜私は夢見心地で自転車に揺られた
「鍵取りました?」
「取った…………別に鍵なんてしなくてもこんなボロ誰も盗りやしないだろうけど。」
「一応です一応!」
「…………。」
古びたアパートの階段を上がって突き当たりの扉を開けば二人だけの小さな世界だ
テレビから流れるバラエティー
交代で入浴して深夜に迫る頃私達は2つ並んだ布団に入った
時計の秒針と冷房の音、そして親方の回し車の音が響く部屋
うとうとと微睡みの中をさ迷う私の意識が覚醒したのはいつもに無い感覚からだった