ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第7章 私が思う事
出会った頃とは比べ物にならないくらい上達した両利きのお箸はきっと私と出会わなければ今に無い姿
平凡なお茶碗に盛られた白米が上品な唇に消えて行く
私の手料理を彼はいつも綺麗に平らげて「ごちそうさま。」と呟くのだ
二人で食べる食事はどんな物でも美味しく感じて私はついつい食べ過ぎる
多分幸せ太りってこういう事なのかな………なんて日々体重計に乗っているのは秘密だけど
彼が外出中に掛かって来る着信は食材の有無
彼は当たり前の様にスーパーで買い物をしてくれる
その美貌からはかけ離れた庶民的なネギの飛び出した袋を腕にぶら下げて古ぼけた扉を開く
小さな玄関から「ただいま。」と愛しい声が響けば何故か無性に泣きたくなるのだ
二人共に過ごしていても転々とホテルで生活していた日々とは気持ちが全く違っていて
自分の家だと強く思う場所に何の迷いも無く彼が帰って来てくれる事
私も「ただいま」と言う場所を彼も自宅だと感じてくれている事が本当に不思議で
それでいて、とても幸せなのだ
私達は夫婦に成った
二人で過ごすのも生活の内
書面では只の他人でも私達は二人共に未来を見据えて歩み出した
プロポーズされた日の事は色褪せず薬指で得意気に輝いていて私は時折現実の事なのだと指先で確かめる
恋い焦がれた大好きな彼に愛されているのだと思えば鼓動は早く強く脈を打つ
こんなに美しい人を私のもの!だなんておこがましいかもしれないけれど
愛しい彼の隣に居られる事、いても良いと許される事がどんなに特別かを日々噛み締めている
何処かまだ夢見心地で何度も目眩を覚える日常は彼と出会ったその日から変わらない
私は今日も全身全霊で彼を愛していて彼は余裕綽々笑いながらそんな私を包み込むのだ