ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第38章 夏のある日の話
カチャカチャと鳴る食器の音、彼と過ごしていると無言の時だって心地良い
結婚したお祝いに浮かれて買った色違いのお箸が鮭の塩焼きに伸ばされて
優雅な所作で薄い唇へと消える様子を私はうっとりと眺めた
何の興味も無さそうにテレビへ視線を向ける黒目がちな瞳は睫毛が長く、スラリと高い鼻筋に弓なりの眉、無感動な表情を浮かべる横顔は見れば見るほど作り物みたいで………
チラリと交わされた流し目に盛大に肩が跳ねた私の箸先はうっかり冷奴を潰した
「…………早く食べなよ。」
なんて私の視線にすっかり慣れ切った彼はふぅっと息を吐き出したけれど、私からしてみればいつまで経っても彼が私の隣にいる不思議を噛み締めてしまうのだ
「イルミさん………今日も素敵です……っ」
「あっそ。」
暫く彼の隣でニヤニヤしていた私だが不意に耳に入った番組の声『ツンデレ』という単語に顔を上げる
トークテーマはツンデレとヤンデレの違いとは?という事だった
……そもそもツンデレとは、普段はツンツンしていてぶっきらぼうだが特定の条件を満たすと態度が柔らかく素直になりデレっとした態度になるキャラクターを指す言葉だったが
今やそれは人物にも当てはめられる言葉として広く浸透した
そしてそこから派生したのがヤンデレである
ヤンデレとは、病みとデレが合体した言葉で主に意中の人に対しての強い独占欲や執着が満たされない状況になると常軌を逸する行動をとるキャラクターや人物に使われる
完結に言ってしまえば、相手への好意が強過ぎる故に嫉妬がヤバく病的な精神状態になってしまう人物の事だ………
私はそんな番組の説明を真剣に聞きながら脳裏に猛烈にある人物の顔が浮かんでいた
「おかわり。」
なんて言いながら空になったお茶碗を私の方に差し出した彼………
彼って………ヤンデレでは…………?
私もおかわりするついでに2つの茶碗に白米を善そった私は今迄彼に感じていた猟奇的愛の答えを掴んだのだ