ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第38章 夏のある日の話
「やっぱりこっちは湿気が凄いですね……暑い………」
「向こうは湿気が少ないからね……体調は平気?」
「はい、ありがとうございます!……ただちょっと緊張しますね……」
「まぁね。」
私達は黒い影を3つ並べたまま慣れた道を辿り歩いて少し緊張したままインターホンを鳴らした
臨月を間近に異世界へ旅立った私………そんな私を心配しながらも強く励ましてくれた両親の住む実家にやって来たのだ
娘にも会って貰いたいし、他に報告したい事もある
一応昨日今日訪ねる旨は伝えていたが、その時の両親の声はそれはそれは嬉しそうに弾んでいた
凄い勢いで開いた扉から飛び出して来た母は
「お帰り……!!!いや〜ん可愛い……沙夜子そっくりやん!!いや、目元はちょっとイルミ君も入ってるな!!」
娘を見るなりメロメロになりながらも「ほらほら入って!」なんて私達を迎え入れた
「おう、お帰り」
なんてぶっきらぼうに言った父も完璧に目尻が垂れている
全く人見知りせずに両親にキャッキャと遊んでもらっている娘
そして驚いたのは娘へ用意されていた玩具や洋服の数々だ
「ほら、うち布団もいっぱいあるし!な、お父さん!」
なんて嬉々と言う母はお泊りさせる気満々で
「おう、愛菜プール入るかプール」
なんて言いながらビニールプールを膨らます父は最早何も聞いていそうにない
実家の庭にあっという間に完成したビニールプールで父に遊んで貰い娘も大層嬉しそうに大はしゃぎしている
その前に娘を抱っこしてご満悦の様子でグッズの数々を披露した母はようやく私達の前に腰を下ろした
これからも1年おきにしか会えないのだからせめて此方にいる間だけでも沢山会いたいのだと語る母に私達は「勿論!宜しくお願いします」と笑顔で答えた
娘にとってお祖父ちゃんお婆ちゃんと呼べる存在は此方の世界にしかいない
彼からお父様とは和解し黙認を得ているとは聞いたし、勿論彼の両親はご健在だけれど娘が会うことはまず持って無いのだ
だから一層私達がこちらにいる間に目一杯両親を好きになってもらいたいと思う