第37章 彼がドレスを脱ぐ時は

「催眠ごっこは楽しかった？沙夜子。」



低く耳に届いた途端首筋に噛み付かれてしまい私は何も答えられないままに唇を噤んだ



「いっ………！んんっ…………！」



いつから催眠術が解けてしまっていたのだろう……………いやそもそも私の催眠術は成功していたんだろうか…………なんて思考は弾け飛んで


彼に与えられる痛みにそぐわない声を懸命に噛み殺す


………ただ痛いだけの筈なのに彼と肌を重ねる度にそうされている内にその痛みがトリガーとなって快感を呼び起こす

彼の歯が肌に食い込む度に繰り返し繰り返し与えられた全てが脳裏に浮かび彼を求める以外の思考がじわりじわりと消えていく


しっとりと舌が歯型をなぞり彼の赤く染まった唇が私の耳朶を含む

わざとらしくチュプッと鳴った水音にピクリと肩を震わせながらも私は無意識的に彼の背中に腕を回していた



「んん……っ……イルミさん……っ」



私の呼びかけに顔を上げた彼は私の顎を掬い上げると唇を重ねる

隅々まで味わい尽くすように舌を絡ませ歯茎をなぞり酸素を奪い

それと同時に脇腹から胸へシャツの中へ侵入した大きな手はブラをずらして胸の形を確かめるようにヤワヤワと動いた


もう片方の手は私の髪をとかして激しさとは裏腹に安心感を与える

何度も角度を変えて贈られるキスは熱く洗脳的で、息苦しさを訴えて胸板を叩けば彼はようやく長い口付けを終わらせた


呼吸の荒い私と酷く妖しい色香を漂わせた彼

キスに滲んだ口紅を手の甲で拭った彼は淫靡に唇を歪めた



「まだ何もしていないのに随分物欲しそうな顔だね。」


彼に口付けられてしまえば簡単に彼を求めてしまう心と身体が心底気恥ずかしくて全身が体温を上げる

私は一体どんな顔をしているのだろう

ただでさえ情熱的なキスで爪先までバクバクと心臓が鳴っているのに羞恥で爆発しそうだ


両の腕で顔を隠す些細な抵抗は彼の手に封じられ再びその目に羞恥を晒す


そんな私をじっと見据えながらも


「沙夜子はどうして俺にドレスを着せたの？」


なんて小首を傾げた彼は「答えて」と囁いたと同時に胸の先端を弾いた



「あぁっ……！んんっ！」