第35章 ソニの村の人々

…………………そして夜が明けて朝が来た






昨日同様の晴天の中私達は村人総出のお見送りを受けた


ただひとりを除いて





「またねオン人ゲンキでネ〜！」


「うん、ありがとうニックも元気で！」





カヌーがゆっくりと離岸して水流に乗る



私はただオールを漕ぎながら発した






「……あの、今回の事……村の人達は知ってたんですか……？」



ジャブジャブと水音がやけに耳についてたった数秒が途方もなく息を呑む




「大人は皆知ってたよ。」



あんなに笑っていたのに……あんなに笑っていた村人は皆誰が死ぬと知っていて笑っていた………


まるで冷たい手に心臓が鷲掴みにされた感覚が襲った


オールを漕ぐ手がカタカタと震える




「…………ニックは？」


「あいつは知らない。」



他の村出身だから、と続いた言葉に私はただ深呼吸を繰り返した

　



怖い



ただ心の奥底から怖かった







全てが怖くて何も言葉が出てこないまま気が付けばどれくらい経ったのだろう











「ね、だから言ってるじゃん。一番怖いのは人間だよって。」






彼の右手には金色のアクセサリーがキラリと光っていた