ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第35章 ソニの村の人々
私達が互いに見詰め合っていたのはほんの数秒、先に視線を外したのは彼だった
「いただきます。」
飾っていないのに漂う上品な所作で主食を千切り取った彼は、皆からの視線を一身に受けながらおかずの具材を少しずつ全て取り主食で巻いた
………………幼虫……………………
ニニータさんご家族やニックがそうしているように、全てのおかずを少しずつ取ってナン的な主食で巻いて食べるのが正しい食べ方らしい
彼はそれをサラリと真似たのだ
…………幼虫はまるまま一匹主食に巻かれている……………
そして主食と向き合った彼は大きなひと口でワイルドに噛じった後に見事な頬袋を作った
「オン人ソニのご馳走オイシイ〜?」
「うん、美味しい。」
ニックの通訳後にワッと歓声に沸く室内の中できっと私だけが驚愕していた事だろう
(あ、あれ……?イルミさんってこういうの大丈夫な人やっけ………………?)
……………そう言えば砂漠の町で昔トカゲを食べたとかそういった話を聞いたし実際食べていたけど…………
……………いや、でもデパートの物産展に行った時カキン国の試食コーナーで虫を吐き出していた気も…………
なんてぐるぐる考えている内に私に集中していた期待の眼差しは、気が付くと他の人物に向けられていた
ニニータさん宅を訪問してきたのは明らかに村人ではない男性
村人皆が身に纏う特徴的な染め物の服は同じでも、日焼けしていない肌に金髪が眩しい見目はこの村に来て初めて目にする姿だった
何やら親しげに村人と話すその男性は片言ながら意思疎通出来る様子
無言で2つ目の主食包みを作る彼に驚愕しつつも見ていると、ニックが男性について教えてくれた
数年前にソニの村に観光でやって来て未だ滞在している所謂バックパッカー的な人であだ名はムー、もうソニ村人みたいなものと皆から言われるくらい村ライフを謳歌しているらしい
ムーさんの登場に子供達が大喜びしているのが何よりの証拠だろう
どさくさに紛れて幼虫抜きの主食包みにがっつく
………と言うか、数年も暮らしているならもう村人だ