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ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第32章 私のヒーロー



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8時02分




あっという間に彼が引き上げた男性は、その笑顔から覗く真っ白な歯と民族風に入った美しい模様のタトゥーが印象的な人だった


当初その安否にハラハラした私だが、驚く事にその男性は上陸と同時に元気ハツラツと語り出したのだ


名前はニック、この川の上流にある集落に住んでいるらしく昨日の大雨で手作りの舟が転覆してしまったそう

とんだ災難だと眉が下がった私に対して尚もニックは笑顔で、今回で4度目の転覆である事

転覆した際は全身脱力して川に流されていれば中洲の小島に流れ着くので何とかなると思っていたのだとあっけらかんと笑った




「デモたすかったよ〜お腹すいていたし、ありがとう恩人」



少し辿々しい語り口調ながら感謝を述べるニックに笑顔を返しつつ、次の気掛かりはもっぱら彼である


一応ニックに聞こえないようにお礼は伝えたものの


…………露骨にムッとしている


全身びしょ濡れになった彼は芸術的な上半身を露わにしながら、ただ今ワニ肉をワイルドに齧っている


気になっていたワニ肉のお味は、ジューシーな鶏肉に爽やかな葉の香味が最高に美味しい……!!!

あの見た目からは想像も付かない癖の無い上質で淡白な肉に感動したのも本当なら、ご機嫌を伺っているのも本当で…………




「イルミさん……最高に美味しいです!!流石はサバイバル技術にも長けてらっしゃる……!!」



チラリと此方を捉える心底ダルそうな瞳にとにかく笑顔を向ける



「ワニって鶏肉みたいな味なんですね!私知りませんでした!美味しい!」



彼がふうっと息を吐いた


その雰囲気から察するにご機嫌は改善しつつあるのだとこれまでの経験から安堵したのも束の間


「わに肉っておいしいよね〜、とり肉より美味しいよ。きみ知らなかったの知れてよかったね〜!あのワニ恩人が退治したの?あんなおおきいの滅多にとれないよ〜。スゴイね〜あなた強いんだ!」


おおらかにお喋りを始めたニックの声に押されて彼の唇から言葉が紡がれる事は無かった





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