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ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第28章 大きな手







「ほら向こうに船が見えるよ」


そんな私の様子に一息付いた彼が遠く海を眺めて眩しそうに双眼を細める

彼の視線を辿って目をやれば、そこには懐かしく大きな船が浮かんでいた



「!!……あれ新婚旅行の!!」


「だね。」



岸辺から離れていても目に付く巨大な豪華客船は、やはり何度見てもビルを海に浮かべたみたいに立派だった


思わぬ場所で懐かしい船を見付けて私の脳裏に目まぐるしく楽しかった異世界での記憶が巡る

沢山の場所を訪れながら彼と重ねた日々、時には森の中でキャンプをして厳ついウサギを見たり、異国情緒溢れる移動遊園地へデートに行ったり

様々なカルチャーショックを受けながらも幸せな日々は過ぎた

そんな異世界での日々の中でも特別幸福に溢れた新婚旅行は忘れようにも忘れられない大切な思い出だ


……あの時出会ったジャポン出身のアキホちゃんはハネムーンベイビーをなんて話していたっけ


だけどあの頃の私は………



その時、ボコンとお腹の中から元気な胎動が届いた


「イルミさん今動いてる!」


「………本当だ。」


足元も見えない出っ張ったお腹に彼の大きな手が触れる

其れに答えるように次々届く胎動は痛いくらいダイナミックだった



「……………痛〜っ………お腹裂けそう…っ!!」


「……まぁ、俺の子だし……」


「………え"っ!?何ですか、有り得るって事ですか!?!?」


「冗談に決まってるじゃん。」


「怖………っ!その冗談は怖過ぎますから!!」


「いくらゾルディックの血が入っていても赤子はただの赤子だよ。」


「ほ、ほんまに……?」


「うん、本当本当。」


「えっ何か適当じゃないです…?」


「本当本当。」


おっかなびっくり目を剥く私に単調に同じ言葉を繰り返す彼だがその間ずっと大きな手がお腹を撫でていた


………私が不安に思った全てはつつがなく……なんて、あの頃の私が知ったら度肝を抜かれるんだろうなぁ……








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