ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第25章 運命のその日
妊娠している………言葉の意味は十分に理解出来ている
要は身体に新たな命を授かっているという生命の神秘……一種の奇跡的な現象の事だ
しかし、しかしである、重要なのはその言葉が私に投げ掛けられているという所だ
…………私は大人だ
コウノトリが赤ちゃんを運んでやって来るなんて思ってはいない
寧ろこの歳でそんな事を本気でほざいていたらホラーだろう
赤ちゃんは愛の営みにより誕生する…………なんて至極当たり前の事を再確認する
確かに私達は幾度と肌を重ねて来た
彼の紳士的な配慮により妊娠の可能性を限り無く低くはしていたけれど可能性は常にあったのだ…………
その度に未だ慣れる兆しも無く胸が破れそうに高鳴る私は彼に翻弄されるまま最後には意識が朦朧としている事が殆どだが
彼の身体能力や体力を考えるに十分に加減はしてくれているのだろうけれど、それでも以前より激しく………………違う、話が逸れた
一人頭を捻る私の隣で彼も小さく首を傾げている
……………いや、何故貴方が首を傾げているのだと言いたくなったが私が声を発するより先に彼が唇を開いた
「この前言ったじゃん、もうそろそろ作ってもいいよねって。」
「………………………えぇ?!」
「えっ。」
真顔で見詰め合う私達の間には生ぬるい空気が流れている
そんな話………私には全く記憶が無い…………
しかし彼の確信的な眼差しは揺るがなかった
「ほら、この前さ………」なんて切り口から語られる生々しい記憶
彼はその辺に戸惑いも無く自身達の行為を1から淡々と説明される複雑さに変な汗をかきながらも
彼から告げられたのは情事も終盤、彼の言葉に私がしっかりと頷いたという事実だった
………確かに私は彼との未来を望んでいて、その未来には常に子供の存在があった
いつか彼と子を設けて温かい家庭を築けたら………なんて妄想はしょっちゅうの事だ
しかし私の中で不確かだったその"いつか"が今だなんて……………