ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第20章 食事の合間のお喋りは
………彼は何処にいても目立つのだ
女子好きする映える場所に彼が現れようものなら辺りはパニックになるだろう
まぁ、つい先日『可愛い沙夜子は俺だけのハニーだから自信を持つんだよ』と彼に言われたので(歪曲)あそこまで騒がないにせよ
私は彼の愛を追い続けるハンターなのでキャーキャー言われているのを見るとちょっぴりだけプンッ!となってしまうかもしれない
しかし見た所時間帯も手伝ってかそんな心配も必要無さそうで純粋に楽しめるだろう
明かりの灯った店内を覗き見ているだけで弾む胸
デートみたい……………デートみたいだ…………!
何だかショーウィンドウに並んだ小さな雑貨まで皆可愛くてキラキラして見える
「イルミさん!ここ見たいです!」
「先に朝食、ショッピングは後でね。」
「はい!」
目的地へ真っ直ぐに前進する彼はそれでも歩調を合わせてくれていて
新婚旅行に出てから毎日がデートで毎日が目まぐるしく心底幸せなものだけど、二人にしては珍しい場所に立ち寄ってみるのも新鮮でたまには良いかもしれない
隣を歩いているだけで夢見心地
手を繋いで歩きたいけれど中々言い出せないままに……到着したのは一軒のベーカリーだった
パンの芳ばしい香りが店の外まで漂っていて私は満面の笑みで彼を見上げた
「ここですか!」
「うん。」
「やったあー!!パン食べたかったんです!!」
「知ってる。」
彼は無感動な瞳を私に向けると然も当然と言わんばかりに扉を開いた
彼は凄い人だ………もしかしたらテレパシーを使えるんじゃないかと本気で思う
私は大事を取って昨夜の昼食も夕飯もお粥だった
ずっとあのパンが忘れられなかった
ツナと玉子とマヨネーズの味と言われても少し未練があったのだ
そんな私の目の前に新たなパンとの出会い…………!!!
私は天国に誘われる気分で扉を潜り深く息を吸い込んだ
胸いっぱいに広がるパンの香り
「……はぁ~何食べよう………」
先に入店した筈の彼より前のめりでショーケースを眺める
小ぢんまりとした店内に所狭しと並んだ焼きたてパン
最初から高かったテンションが天井知らずに上昇して行く
…………どれもこれも美味しそうだ