第15章 言い伝え……？

「何見ます？」


「何でもいいよ。……沙夜子は何から飲むの。」


「チューハイお願いします！」


「何味？」


「えっと……レモンで！」



見た目には普通のハイエースと変わらないけれど

車にしては広くて、部屋にしては小さな空間には工夫して収納された物で溢れている


上開きで戸が開く冷蔵庫は家庭用の小さな一つ扉よりも小ぢんまりしているけれど備え付けの物で

中を覗き見た彼は飲み物を用意してくれた

私は運転席の後ろ側に取り付けた調理スペースからプラスチックのコップを用意して

各々が自分の席から近い事柄を分担して作業するのはある意味、共同作業みたいで楽しかったりする



缶を開く小気味良い音の後シュワシュワと弾ける炭酸を聞きながら

私は嬉々としてDVDのセッティングに勤しんだ





選んだ映画は50回目○ファーストキス


何度も見たけど大好きな作品


舞台はハワイだ



フリップダウンモニターに流れ出した映像を前に漸く隣り合った私達は二人同時に手を合わせた




「いただきます！」


「いただきます。」





まだホクホクと温かい鮎に嬉々として噛り付けば特有の香りと塩焼きの芳ばしさが口の中に広がって
その何ともクセになる味わいに思わず溜息が漏れ出した