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ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第2章 彼のご挨拶









今隣に並び歩いている彼が裏でどれだけこの日を迎える為に尽力してくれたのだろう


私には想像も出来ない様々な難題をくぐり抜けて私を選んでくれたのだと思えば彼の愛を強く感じて


熱くなる目頭に必死に涙を耐えた



「…………ありがとうございます、イルミさん」


「別に。」






曲がり角を曲がればアパートは目の前で


視界に映ったお世辞にも壮観とは言えない庶民的な建物に私の歩調は早くなる


家族と再会し、大好きな母の料理でお腹も一杯


カンッとレトロに鳴る階段をスニーカーで踏み締めて私は久しぶりに鍵を握った



何だか心臓が高鳴って仕方がない



ガチャガチャと覚束無い手つきで鍵を開いてドキドキしながらドアノブを掴む


自宅に帰るのがこんなに嬉しい日が来るなんて驚きだ



カチャリと音を立てて開いた扉から私は足早に室内の灯りを付けた


留守中部屋の事は母に任せていたので溜まった郵便物がちゃぶ台に詰まれているけれど、それ以外何ひとつ変わる事は無く



リュックを降ろして玄関を振り向けば彼の黒い瞳は何処か懐かしそうに細められていた






「………あの日から少しも変わらないんだね。」






ポツリと呟いて部屋を見渡す彼の姿にドキリと一際跳ねた心音





……………私の部屋に彼がいる…………






孤独な日々の中で何度も願った望みが今、目の前で起きたのだ




使い込まれた座椅子


小さなちゃぶ台


色ちがいのマグカップ


畳んだままの布団が2つ



色褪せた壁紙に蘇る二人の日常




胸がぎゅっと締め付けられて気が付けば涙が頬を流れ落ちていた








「………お帰りなさい………イルミさん」






「ただいま。」







昔より少し大人びた彼が微笑んだ










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