第74章 妊娠記録③羽伸ばし
くじら島で過ごす時間はあっという間に過ぎ去り、翌日に朝食をご馳走になった後 ミトとゴンの曾祖母に見送られ島を発つことになった。
「じゃあね リネルちゃん、キルア君。またいらっしゃい」
「はい。どうもありがとうございました」
「お世話になりましたー」
「元気な赤ちゃん産みなさいね」
「はい!」
途中パリストンから仕事絡みのメール連絡が入ったことを除けば、ジンのアシストによるリネルの臨時休暇はとても有意義な時間になった。
帰路も長く、戻る頃には既に昼を余裕で過ぎていた。ゴンとキルアと共に遅めの昼食をとった後 リネルは俄かに眉をへの字にしてメール返信を入れた。
「…私一回職場行かなきゃ」
「今日も休みじゃなかったのかよ」
「そうなんだけど。急な休みだったし ちょっと仕事あるみたいで、きっと雑用だけどね」
「そっか 忙しいね 」
「ま いいよ、頑張る!昨日今日でだいぶ癒されたしね」
まだ遊んで帰るというゴンとキルアと別れ、リネルは一旦職場へ向かうことになった。
◆
ハンター協会本部にて。呼ばれた要件はリネルの予想通り、雑務とくくれる用件であった。
「いや~お休みの所お呼びして申し訳ない!でもリネルさんのお陰で助かりましたよ」
「…やっぱりそもそもここ人足りないんですよ。バイトの子でもいいからもっと大勢雇ったらどうです?」
「人が悪いなぁ リネルさんも。不可能なのわかってて仰ってますよね?賃金やり繰りと契約労働者に任せられる仕事の範囲は限られてますから」
パリストンの的確な指摘には答えぬまま、協会のサーバーシステムへのアクセス画面を見つめた。
聞けば急遽、上からサイトへの情報掲示を短納期にて啓発されたとのこと。それらコンテンツの整備とアップ程度の雑用に パリストンが手間を割く暇がないのは明白で、仕方ないに休日仕事を引き受けるしかなかった。
「はいっ 後はアップロードが無事に終われば終了です。データ量多いので時間かかるかもしれませんが」
「助かりました。しかし貴女が産休に入ったらいよいよ僕は大殺界の大ピンチかもしれません」
「大袈裟な、」
「少しも、大真面目ですよ」
本気でそう思っているのかは全く読めないパリストンに、苦笑いを返すしかなかった。