第74章 妊娠記録③羽伸ばし
あれから。ほぼ終わっていた食事の支度の完了後、曾祖母も含めて5人で食卓を囲んでいた。1人だけ異様に肩を落としているミトは リネルに何度も謝罪を述べていた。
「リネルちゃん本当にごめんなさい…私ったら物投げたり怒鳴ったり 妊婦さんになんてことを…」
「いえいえ!大丈夫ですからお気になさらずに」
「でももしお腹の赤ちゃんに何かあったら…」
「大丈夫ですって」
「全くこの子は昔っから思い込むと突っ走るというか 人の言う事聞かない所があってね。前だってほら 勝手に勘違いして大騒動起こした事あったねえ?」
「もう おばあちゃんてば 昔話はやめてよー…」
頭を抱えるミトをフォローするように ゴンが少し逸れた話題を持ち込んで来た。
「因みにリネルもハンターなんだよね!オレとキルアからすれば先輩ハンターで 俺等が試験を受けた時の試験官だったんだよ」
「え?そうなの?リネルちゃんて凄い人なのね…」
「いえいえ全然です!あの頃はまだ補佐官で雑用係みたいなものでしたし。雑用って意味では今もそんなに変わらないですし」
「ハンターって危険で難しい資格だって聞いてるけどリネルちゃんみたいな女の子でも取れちゃうものなの?」
「んー、“運”はあると思います。試験官との相性やその年の受験者の総数や実力のバラツキ、それらを係数に統計取ると実際は運による所がすごく大きいんですよね ハンター試験て」
「…なんだか頭も良さそうなのね」
「え?いえ、そんな事ないですよ!」
リネルは首を左右に振る、キルアは横目でそれを見ていた。
「ま、頭ん中はどーだかわかんねえけど。実力で言えば 力と動きの俊敏さだけはまあまあだな リネルは」
「キルアの評価は何故上から目線なんだろう…」
協会内部にいるとリネルはまだまだ若手であるし そこまで目立つ存在でもない。この世界とは離れた人間から評価を受ける事は珍しく、妙に気恥ずかしい気持ちになっていた。ゴンが更に リネルの総評を無駄に高める事例を提供してきた。