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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第71章 パーミッション/共同任務/微裏


ゼノの声の後ろではあのパーティー会場の音楽、給仕や雑談の声もする。ゼノがどこで何をしているのかは明白だった。


『仕事は終わったがの。会場内になかなか面白い古客がおってな 営業も兼ねて顔でも売っておいたらどうかの、と思うて』

「ああ そういうこと」

『特別にタダで紹介してやるぞ』

「まあ…気が向いたら行くよ」


イルミはぶつりと無線機を落としそれをポケットにしまい込む。
何事もなかったかのように 無言のまま首元に顔を埋めてくるイルミにそっと抱きつき、リネルは小さな声を出す。


「…行っちゃうかと思った…」

「こんな状態で行けると思う?」


取られた片手を下半身に導かれた。はち切れそうな熱を帯びているのは自分だけではないようで、そこを控え目に撫でてみる。
指先から伝わるその硬度が、温度が、身体を疼かせてたまらなかった。


「…イルミ」

「なに?」


薄暗闇で互いに見つめ合った、黒い瞳に囚われる。
甲板で落ち合った瞬間から 今夜はこうしてイルミを独占する腹積りはあった。あとはリネルの方から 確たる許可を呈するだけだ。


「…ここじゃヤダ…ベッド連れてって」

「いいよ。」



本日初めて言えた最大限に甘えた言葉は難なく受諾された。イルミは柔らかな手つきでもって、リネルを静かに抱き上げた。

降ろされた広いシーツはしなやかでとても冷たかった。
本日はまやかしの夜なのだから それくらいが丁度良いのかもしれない、なんて皮肉が胸中を過ぎる。
きちんと靴を脱いでからベッドに上がり込んでくる、そんな些細なイルミの所作ですら大切なファクターに思えてしまう。黒い影を落としてくるイルミを力なく見上げてみる。


「……っ好き イルミ」


これは何もかもに陶酔しているせいだ、絞り出すような声だったが 何故か素直にそう言えた。少しだけ物珍しそうに きょとりとするイルミがとても愛おしくなる。


「リネルがそんな事言うなんて珍しいね」

「…言っちゃ、ダメだった…?」

「いや いいよ。」

「…好き イルミ…」

「どうしたの?今日は」

「…わかんない…」


今はまだ曖昧でも焦る事はない。
今夜この部屋の中では くどいまでの愛を語る許可を得ている。許容値を超えたってもう関係ないのだから。





fin

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