第67章 再び日常
しばらくしてパリストンがリネルの前に提示した仕事にリネルは驚きの表情を見せた。
「以前から一部の人間使って 探ってはいたのですが 《隠者の書》っていう書物を本格的に探したいんです、危険性があるかないかも含めて調査をしたくて。リネルさん、プロジェクト組んでやってもらえませんか?人手が必要なら言ってくれればアサインしますから」
「え…私が仕切って、ですか?」
「ええ、そうです」
今まで雑用と言える仕事が多かったが 責任感の重い仕事を任されるのは珍しく リネルはついいい黙っていた。
パリストンは含みのある笑顔を見せた。
「これは出世のチャンスですよ?」
「出世云々はともかくですけど」
「かなり大変だとは思いますけどね」
「それはわかります…」
「お休み前までにプロジェクト案くらいは提出して下さいね」
パリストンは爽やかな白い歯を見せて言う。
リネルはつい小さな溜息をついた。
相変わらず仕事は忙しいし、先日の夜もそうだが いざ新婚モードに乗ろうとしても状況がそれを許さない。前途は多難。
それでも全てを片付けた先には久々の揃っての休日がある、そしてこの仕事はいつもよりやりがいもある。そう考えれば前途は洋洋。
それに壁やハードルは高い方が 皮肉にもやる気が出てくる。
これは性分なのかハンター故か。
そしてそれを乗り越えた先に待つ時間は より甘い至福の時となるであろう。
リネルはパリストンを見据えて ハッキリ告げた。
「わかりました。やらせてください」
「そう言ってくれると思ってました」
「お休みのためにも頑張らなきゃ」
「そうですね、お願いしますよ!」
fin