第1章 プロローグ
ハンター協会に勤めるリネルは試験官から雑用まで 様々な仕事をこなすハンター協会の何でも屋だ。簡単なお茶汲みから協会にとっての邪魔な人間の始末まで、リネルの仕事は多岐に渡る。
ただでさえ忙し過ぎる日々はリネルにとってはデフォルトだ。そして只今は今期ハンター試験の真っ最中、いつもながらの人員不足に煽られて リネルは試験官として当然のように駆り出されていた。
一旦試験がはじまると受験者はもちろん試験官も中々自由がきかないのが辛い所である。が、本日は二次試験の後に運良く時間に空きが出た。とはいっても明朝には再び試験会場へ戻らなくてはならないのだが。
リネルは近場でホテルを取る、そこで一夜を明かすことに決めた。
「ふ~……」
ハンター協会の名前を使って押さえた高級ホテルの部屋へ着く。荷物を無造作にベッドに放り、リネルが取り出したのはスマートフォンだ。先程確認したばかりのメールを念の為もう一度確認し、すぐに一本の電話をかけた。
「もしもしー イルミ?」
「リネルか 時間空いたの?」
「うん。運良く」
「助かった。後で行くからホテルと部屋番号メールに入れといてよ」
「了解。」
会話だけを拾えばこれから甘いデートをする恋人同士のようであるが、全くそんな事はない。2人を繋ぐものは「仕事」以外に何もなかった。
リネルの業務に含まれる大切な仕事のひとつに「暗殺」というものがある。日頃より雑務に追われているリネルは、ある仕事で出会った暗殺名家ゾルディック家のイルミ=ゾルディックに 時たま仕事を投げるようになっていた。
顔を合わせ何度か仕事を依頼するうちに、合理的な部分が濃くなっていく。プライベートには下手な干渉をし合わず、常に仕事優先がスタンスである2人は お互いに都合さえ良ければ同じ部屋にまで寝泊まりする関係に発展していた。