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イチバンノタカラモノ。

第3章 コイノメバエ。


嫌味のつもりで言ったのだが、ロキは素直に受け止め、そうだろうと言わんばかりに胸を張った。
「いいか?生き物を飼うというのは、責任重大だぞ?この子はまだ子猫だから、色々な事に興味を示すし、食事も気をつけなければならないし、排泄物の処理だってある。毛玉を吐いたりもする。きちんと面倒見られるか?」
「うむ。最善を尽くす」
というわけで、楓とロキの家に、新しい家族が追加された。

「名前はどうする?」
「私はなんでも構わないが」
「そうだなぁ。白いし、雪、なんてどうかな?」
「雪か。うむ、いい名前だ」
「今日からお前は雪だぞー」
子猫、雪は理解していないようでもあったが、名前をつけてもらえた事に喜んでいるようでもあった。
雪は、人懐っこい性格のようで、楓にも甘えるが、基本的にロキについて回る。
「この私が動物に好かれるとはな」
ロキはそうぶつくさ言っているが、内心の嬉しさを隠しきれていないようだ。楓はそれを見て、確かな幸せを感じている。

夕飯の支度をしている楓を、暖かな物が包んだ。ロキが後ろから抱きしめているのだ。
「どうした、ロキ」
「愛しい者を抱きしめるのは本能だ」
「……」
さすがアスガルド人。こういう事を平気で言えてしまう。照れながらも、楓はロキの温もりに安心を覚え、拒絶する事はしなかった。しかし……
「非常に作りづらいんだが」
「夕飯など何時でもいい。楓」
「ん?……んっ」
ロキは楓の顎を持ち、顔を上に上げさせると、そっと口づけを落とした。幸せな時間だ。すると、それを邪魔するものが現れた。
「にゃ」
雪だ。ロキの肩に飛び乗り、そのまま楓の顔の上に乗った。
「雪……重い」
「なぁぁ」
間延びした声を出すと、雪はひょいと降り、ソファの上で眠ってしまった。
「嫉妬をしているのではないか?」
「はは、そうかもな」
雪はソファでくつろぎながら、幸せそうな二人をじっと見ていた。

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