第1章 デアイ、ハジマリ。
「きょ、巨人族?」
「あぁ」
けろりと答えるロキに、ふざけている様子は見られない。
「で、そのアスガルドからどうして日本へ?」
「大罪を犯した罰だ」
皆が読んでいるこの話の冒頭を、ロキの口によって楓に語られた。
「ニューヨーク……確かにそんなニュースがやっていたな」
ロキがニューヨークで起こし、「アベンジャーズ」によって収まった事件の話を思い返す。大変だな、とは思ったが、日本人はこの話には割と無関心だったようで、楓も朧げにしか覚えていない。
とにかく、そのせいでロキは日本へ人間して暮らすという罰を与えられたと言う。
人間として生まれた楓はその罰がどれだけ重いものなのか、理解に苦しむ。
「オーケー。まぁ、大体の事は分かった」
「私からも質問があるのだが」
「なんだ?」
「お前は、人を殺しているのか?」
今度は楓が語る番らしい。彼女はゆっくりと語り始めた。しかし、全てではない。現在の自分についてのみだったが。
「私は、とある男を追って便利屋という仕事をしている。仕事の種類は様々だ。もちろん、その男の情報を得られるならば、殺しだって平気でする。抵抗がないと言えば嘘になるんだけど、もう慣れた」
ロキは神妙に頷いた。
これでまた一人自分の元を去って行く。そう楓が思った時、ロキは意外な行動に出た。
ポケットにしまった、十万円を差し出したのだ。
「な、なんだこれ」
「便利屋へ依頼する。私をここに住まわせてくれ」
「……はぁ!?」
ロキが差し出した十万円を受け取ってしまった楓。
こうして、二人の奇妙な同棲生活が始まる事となる。
一章 完