第7章 弟の進路
帰り道をとぼとぼ歩く。
三者面談は思った通り最悪だった。
成績も素行も悪いルフィが行ける大学なんてないと突っぱねられたのだ。
ガープはコネで警視庁に入れるとか暴走するし、当のルフィは高校卒業したら武者修行に出るとか言うし。
ちゃんとした仕事に就いて、真面目に生きてもらいたいだけなのに。
(……私が押し付けがましいのかな?)
肩の荷が下りたと言わんばかりに、軽い足取りで前を歩くルフィが振り返った。
「ねーちゃん、腹減った。今日の夕飯なんだ?」
「ああ…。何にしようか?おじいちゃん来ると思ってなかったから」
(そういや、明日のサンドイッチ用のパンも買って帰らないと。あと卵と…)
明日の弁当はたまごサンドの予定だった。
隣を歩いていたガープが破顔する。
「せっかくわしが来たんじゃから、寿司でも行かんか?おごりじゃぞ」
「マジで!?やったー!!」
「ちょっと大丈夫なの?ルフィすごく食べるのよ?」
「心配するでない。おつるちゃんも誘うか!」
ゴムのように飛び跳ねながらどんどん前を行くルフィだったが、商店街の七夕飾りに気がつくとその前で立ち止まった。
追いついて隣に立ったアンを見て笑う。
「もうすぐ七夕かー!ねーちゃん誕生日だな!」
そう、アンの誕生日は7月7日だ。
「そういえば…」
アンは竹に飾られた色とりどりの短冊に手を伸ばす。どれも微笑ましい願い事ばかり。
子供の頃から大好きな定番の行事だったけれど、アンはあの年から短冊に願い事を書くのをやめた。自分の願い事はもう二度と叶うことはないから。
「……もう8年か」
背後から姉弟を見ていたガープが七夕飾りに向かってぽつりと呟いた声が耳に入り、あの日の記憶が呼び起こされようとしたけれど、唇をぎゅっと噛んで考えないようにした。