第1章 彼の一日
♦︎20:15 すべてのオペ終了
今日もオペは滞りなく終わった。
「今日も頑張ったなー!!」
オペ室の片付けをしながらペンギンとシャチは労い合う。
「シャチ、後でコンビニ行こうぜ」
「おう!アンちゃんいるかなぁ。キャプテンも一緒にどうですか?最近コンビニにカワイイ子がいるんすよね。顔がちっちゃくて、モデルみたいにすらっとしてて。超癒される…」
「興味ねぇよ。それにICUに術後の患者の診察に行かなきゃならねぇし。二人ともお疲れさん。さっさと帰れよ」
「「お疲れさんでした!!」」
オペ室を出てICUに向かい、術後の患者の診察と指示を出し終えて医局に戻る。
「今日も遅かったな。お疲れさん」
「……コラさん、待っててくれたのか。先帰っていいって言ったのに」
医局ではロシナンテが待ってくれていた。穏やかな彼の顔を見ると思わずほっとして、笑みがこぼれた。
「それよりロー、あの子のオペ引き受けてくれたんだってな。ありがとな」
「…あの子…?カンファの患者はコラさんの患者だったのか?」
朝のカンファレンスの議題に上がった、あの小児の患者。コラさんはカンファレンスには参加していなかったのに。
「最初に診たのがおれなんだよ。すぐに循内に紹介したんだけど。ローなら安心だ!きっと治してくれるだろ!」
「まだオペできると決まった訳じゃねぇ。それに過大評価はよしてくれ」
「そんなことねぇ!ローなら大丈夫だ!」
ロシナンテはそう破顔した。
全く、この人には敵わない。
♦︎20:50 業務終了
職員駐車場に行くと、最近よく隣に止まっているハーレーダビッドソンに目をやる。塗装を塗り直した後があり、型も古そうだ。
こんなバイクに乗るようなコアな職員がいるのだろうか。
「ロー、バイクに興味あったのか?」
「…ああ。運転したくて大型免許取ったけど、結局乗らずじまいだよ」
ハーレーから視線を外し、フェラーリに乗り込む。今日も外で夕食を済ませ、論文に目を通し、きっと眠るのは0時を過ぎるだろう。
土日も当直やら呼び出しやらで、趣味とか女とか仕事以外のことを考える隙間なんてない。だがこれが自分の望んだ道なのだから、仕方がない。
正直医者は天職だと思っている。
♦︎0:10 就寝