第5章 好きなわけない
サボは時計を見る。
「終電なくなってもいけないし、そろそろお開きにするか?」
「そうね。また四人で集まろ。家でもいいし」
「賛成!アンちゃんの料理、美味しいし!」
「久しぶりにルフィに会いたいし、おれは今から行く」
こっそり四人の会話を盗み聞きしていたローは、持っていた割り箸をへし折った。
幸い、辺りは他の客の話し声がうるさくてアン達は気づいてもいない。
「いいけど、あんまりうるさくしないでよ。大家さんに怒られちゃう」
「大丈夫だって。夜食あれ作ってくれよ。甘くない卵焼き。あと、酒あるか?」
「日本酒ならあるけど。エースが食べるとルフィも食べるんだよねぇ」
アンは肩を落とした。作る量は二人分では到底足りない。卵何個いるんだろう。
(甘くない卵焼きって何だよ…!)
仲睦まじいところを見せつけられて、平常心が保てない。この時間から家に行って、弟とも仲がいいなんて恋人同士でもよっぽど深い間柄だ。
きっと今夜はアンの家に泊まるんだろう。
いくら弟達がいるとはいえ、奴らが寝静まったら二人ですることなんて決まっている。
せっかく頼んだ料理や酒の味もわからない。
苛立ちと嫌悪感が腹の中でふつふつと煮えくり返る。
(……あの男、許さねぇ…!!)