第4章 見返りは弁当を
数日後コラソンが名誉院長くれはに泣きついたこともあり、ローへの弁当禁止令が発令された。
ようやく普段の静けさが戻ってきて、午前中からのオペの後コンビニに立ち寄った。
研修医あがりの助手と息が合わず、病変も思ったより悪かったので予定より時間がかかった。
時刻は3時を過ぎていたが、昼食を摂る気にはなれない。あの弁当があれば別かもしれないが。
目新しい物はなくて、缶コーヒーと栄養ドリンクをレジに持っていく。ペンギンとシャチのお気に入りの店員がいた。
(……手が綺麗な女だな…)
袋に商品を入れる彼女を眺める。目についたのは細長く色白の手だった。ネイルすらされておらず、爪は短く切りそろえられているのに好感が持てた。
「あの!おつり…」
「…ああ、悪い…」
(疲れてんな……)
彼女の仕草に目を奪われぼうっとし過ぎていたらしい。
少し戸惑った顔をした店員からおつりを受け取るとローは医局へ向かった。
「ロー!今、オペ終わったのか?」
医局ではコラソンが弁当を食べていた。
「コラさんこそ、今昼飯か?」
コラソンの隣に座ると栄養ドリンクの蓋をねじって開けた。
「今日は外来が長引いてさぁ…。おかげでこの弁当食べれてるんだけど」
「弁当?」
コラソンが食べているものを見ると、それはレイジュが毎日食べている弁当によく似ていた。
「そういえばロー、卵焼き好きなんだろ?」
コラソンはローの口に卵焼きを放り込む。
ほのかに甘い、それでもまた食べたくなる他にはない美味さ。
(間違いねぇけど、何で…?)
「ほら、この唐揚げも美味いぞ。どこの弁当だろうなぁ?」
「は?」