第12章 波乱の夏休み
その直後から今まで普通に忙しかったのが、輪をかけてクソ忙しくなった。
平日は外来やオペをこなし、土日は県外に出張に行って、またオペや講習。こんな生活を続けていればいつか過労死してしまう。
忙し過ぎて昼休憩すらまともに取れず、コンビニにアンの弁当を取りに行くことすらできなくなった。
レイジュがついでに取ってきて、医局の冷蔵庫に入れておいてくれたのを家に持って帰って夕食にしている。ほっと癒されるのはアイツの弁当を食べている時ぐらいだ。
当然あの小料理屋にも行けないし、しばらくアンの顔も見ていない。
会いたい。
会って抱きしめたい。
抱きしめてキスをして、その後は?
(……ぶん殴られて、一生無視されるのがオチか…)
夕飯の後、ソファに寝転がってスマホをいじっているとアンからメッセージが来た。
こんなことほぼないのに。はやる気持ちを抑えて文章を読む。
『お疲れ様です。
夏休みのため、来週から一週間お弁当お休みです。』
(……マジかよ…)
一欠片のひねりもない、ただの業務連絡。
何でこんなに働いているのに、こんな思いをしなければならないんだろう。全然報われない。
アンにメッセージを返信しようとしたが、何も思いつかなくて結局やめた。
そのまま目を開けていることができなくなり、引きずられるように眠りに落ちる。
アンのことを考えていたからか、彼女の夢を見た気がする。