第11章 おばんざい
オペから3日後、ローの前には弁当と菓子折りを持ったアンがいた。
「父がお世話になりまして。皆さんでどーぞ!」
いつもの弁当の下に菓子の箱。全然カモフラージュになってない。
「……ここの病院は心付けは禁止だ」
上の弁当だけを取ろうとしたら、アンは非難の声を上げた。
「そのお菓子屋さんのパウンドケーキ、すごく美味しいんだから!持って帰ってもらわないと困るんだけど」
(……別に困らないだろ。弟達と食えばいいのに)
それにもらって嬉しいのは3日振りの弁当の方だった。色々あって他人の弁当まで作る暇がなかったらしい。
その間、アンの弁当が恋しくて仕方なかった。
「シャンクスさんだが今日の採血結果が良かったから、明日一般病棟に移る予定だ」
コンビニに行く前にICUに寄ってきた。シャンクスは顔色も良く、看護師と普通に会話ができるまでに回復した。
元々若いし体力があったのが幸いしたのだろう。抗生物質がよく効いて足の蜂窩織炎の治療もうまくいっていた。
一般病棟に移ってリハビリも治療と同時に進めれば、そう遠くない時期に退院できるだろう。
「そう、よかった。色々お世話になってありがとうございます」
本当に父親のことが心配だったらしいアンはローに頭を下げた。
なんやかんやでアンと弟は毎日シャンクスの見舞いに訪れていて、それを彼自身も楽しみにしていた。
「次からは受け取らないからな」
そう言って、弁当と菓子の箱を受け取る。医局の奴らにでも配ってやろう。
アンはほっとしたように笑ってぺこりと会釈した。
医局に戻ったローは菓子折りを傍に置いて、早速弁当の蓋を開けた。
今日のメインはアジフライだ。魚好きだから嬉しい。あとはいつもの卵焼きと二品おかずが入っていた。
しかもいつもより卵焼きの数が多くて、弁当箱が大きい。感謝の気持ちからだろうか。
アンの味付けは舌と脳がすっかり覚えてしまっていて、虜になっていた。連休で弁当がなかったりするともう耐えられない。