第9章 彼女の願い事
都内有数の総合病院、サクラ医療センター。
この病院で研修医として働けるだけでも誇れることなのに、チョッパーは心が折れそうだった。
その日の夜は重症患者が次々運ばれてきて、スタッフが走り回る中、小さなミスを続けて先輩医師に怒られるし、全然役に立てないのが情けない。
同じ研修医のビビは経験を積んで一歩も二歩も前に進んでいるのに。
(何で僕って……)
そんな時救急隊からのホットラインが鳴って、心臓が止まりそうになった。人は出払っていて取れる人間は自分しかいそうにないから仕方なく電話に出る。
『ーーこちら第三救急隊、受け入れ要請です。40代ぐらいの男性、カプセルホテル内で意識レベルが低下しているところを発見、高熱があるようです』
「あの、すみません、今の状況では……」
とても新しい患者を受け入れはできない。そう言おうとした。
「…受け入れるって言え」
振り返るとトラファルガー・ロー医師がいた。
「わぁ!先生、でもみんな…」
「診れる医者がいないなら、おれが診るから受け入れるって言え」
「あ、受け入れできます…」
ホットラインが途切れて、さっさと歩き出したローの後を追う。救急処置室に向かっているようだ。
「でも先生、今日当番じゃないですよね?」
「たまたま居ただけだが、患者をたらい回しにするわけにいかねぇだろ」
何でこの人はこんなにも自分とは違うのだろう。
「あ、キャプテン!働き者っすね〜」
救急処置室に行くとペンギンとシャチがいた。
「お前ら暇なのか?」
「言い方!オペ室は人手が足りてるんでリリーフ!」
「あと10分で患者が来るぞ。準備しろ」
「アイアイ!」