第1章 冷たくて優しい
「触んな!!」
低い声が聞こえ振り向くと
次の瞬間、先輩の胸倉を掴んだ大輝くんが
「ふざけんな!てめェ何してやがる!!」
一瞬何が起きたのか分からなかったが
「え?ちょっ…と大輝くん!やめてよ!」
とにかく大輝くんを止めないと…
すると先輩がスッと大輝くんの耳元に近づきーーーー
「ーッ!」
何かを言うとバッと先輩を離し睨みつけている。
「…もうこんな時間だね。僕は先に帰らせてもらうよ。さん。悪いけど鍵をお願い出来るかな?」
「あ、はい。」
「じゃあ、また部活で。今日はいろいろ話せて良かったよ。それに…少しは僕にも望みがありそうかな。」
「…?」
「チッ!ねぇよ。さっさと忘れろ。」
そういうと私を先輩から庇うようにして前に立つ。
ー『そんなに大事なら手を離さないことだ。大事なものが手からこぼれ落ちた後では後悔してもしきれないだろう。』ー
ー食えねェやつ…何でも見透かしたような目ェしやがって。あいつを思い出すぜ…。ー
とりあえず帰ろうと頼まれていた鍵を返しに行く
帰り道、何故かムスッとしたままの大輝くんが
「。あいつに何された?」
「あいつって…先輩だからね…」
「んなこたぁどーでも良いんだよ!」
「えっと…何もされてないけど…。」
「あ?触られそうになってただろうが!」
「…触られてないよ?」
言ってる事は子供っぽいけど
あきらかに不機嫌な様子で舌打ちする大輝くんを見て思わずビクッとなる
何か言わなきゃと思っていると
「ちゃーん!大ちゃーん!」
後ろから呼ぶ声が聞こえる