第1章 冷たくて優しい
「大輝くん!!」
廊下の少し先に見えた彼の姿。
嬉しくて走り寄り、つい叫んでしまったけれど、すぐに後悔した。
背の高い大輝くんの身体に隠れた、その先にはさつきちゃんがいた。
…やっぱり、さつきちゃんの方が…。
さつきちゃんのことは大好きだ。
引っ越してきたばかりで友達もいなかった私に声をかけてくれて…
ーあたし、ももいさつき。よろしくね。だいちゃんもほら!
ー…あおみねだいき。(プイッ)ー
ーもうーだいちゃんはずかしがって!ー
ーわたしはよろしくね。(ニコッ)ー
その時の出会いから仲良くしてもらってる。
「あ!ちゃん!!」
「…ご、ごめんね…話の途中…」
きっと、バスケに関する大事な話をしているんだろう。
小中高と幼なじみでずっと一緒にいるけど、元々は2人だけで幼なじみだったのだ。
こうして改めて2人を見ているとお似合いだと思う。
「ごめんねちゃん。ちょっとだけ待っててね!」
「うるせぇなーさつき。分かったっつったろ!」
「だって大ちゃん何度も言わないと忘れるんだもん!」
ー大ちゃん…昔の呼び方。最近まで青峰くんだったのに。
WCで桐皇バスケ部が負けてから…だと思う。さつきちゃんはまた昔の呼び方をし始めた。
何があったのかなんて聞けないけど…さつきちゃんに対して嫉妬してる自分が凄く嫌だ。
「…ぃ…おい!!」
「!?はい!」
「はいじゃねーよ!何か用か?」
「大ちゃん何その言い方!もっと優しい聞き方あるでしょ!」
「ハッ!うっせーさつき。さっさと行けよ!」
「愛想尽かされても知らないんだからー(べー)ごめんねちゃん!じゃあまた。」
バイバーイと大きく手を振りながら、さつきちゃんは教室に戻って行く。