第1章 冷たくて優しい
先輩に抱きしめられたまま私はポツリポツリと言葉を溢していく
「私…昔から大輝くんの楽しそうにバスケしてる姿を見てるのが好きなんです…繊細で優しすぎるから現実とのギャップに苦しんでた時もあるけど… 」
「……」
「彼には悲しい顔や苦しい思いはして欲しくないし、させたくなくて」
「君が…泣くことになっても?」
「…本当ただの自己満足で彼が幸せなら私も幸せだって思えるんです」
「……」
「だから…ごめんなさい、…酷いこと言って別れちゃったから、もう傍には居れないけど、それでも大輝くんの事きっとずっと好きなんだと思います」
と言って先輩の胸を押して離れようとするが細身の身体に似合わず…力が強く押し返せない
ー彼女はそうやって…いつも彼の心も守ろうとしているのかー
「本当…憎らしいくらい君に想われている彼が心底羨ましいよ…」
「え?」
「最後だ…これくらいは許してくれるだろ?」
何かに言い聞かせるように呟き更に強く抱きしめてくる先輩に思わず押し返す腕が止まる
「…に触るなッて言ったろ!」
肩をグイッと後ろに引かれ背中に温かい感触とミントのような爽やかな香りがする
「…大…輝くん」