第1章 欲情のケダモノ【善逸・学パロ】
「れいちゃん!!大丈夫!?」
はた、と気づくと尻餅をついて、首から下がびしょ濡れになっていた。お尻が痛い。我妻君が心配そうにこちらへ駆け寄ってきて、そばにしゃがみこんだ。
「う、ん。ちょっと痛いけど大丈夫。それより、ここ拭かないとな……」
あーあ、と悲惨になった床を見渡す。散らばっていた紙が水を吸ってぐちゃぐちゃだ。
彼にも雑巾でこちらを手伝ってもらおうと我妻君の方を向くと、どうも様子がおかしい。顔が赤く、口元に手を当てている。
「我妻くん?どうしたの、具合でも……」
つ、と彼が指をさす。私の体に何か、と思い下を向くとすぐにわかった。下着が、透けていた。いつもならセーターを着ているが、掃除で汗をかくのでシャツだけになっていたのが仇となった。
「あ……、えぇっと、その、ごめ」
きゃああ、と少女漫画のようにでも叫べば可愛らしいのだろうか。羞恥心より先に気まずい思いをさせて悪かったな、というのが出てしまった。
「いや!!俺の方こそごめん!見るつもりはなくて、え、あ、でもその黒いブラ超似あって、ちが、えっと、とりあえずこれ使いなよっ」
我妻君は顔を逸らしながら、着ていたジャケットをこちらに被せようとしてくれた。よっ、と彼が立ち上がるや否や、その足元にはまだ水たまりと、ぐちゃぐちゃになった紙があり、つるんと言う音が聞こえてきそうなほどいい感じで滑った。
「ぎゃあああああああああッ!!!」
どしん、と喚く彼がこちらに倒れてきて、私は何とか受け止めたのだが……。
「だ、大丈夫?我妻君」
「……」
彼の身体は私の脚の間に割って入っており、顔は私の胸元に埋もれていた。そしてその華奢な手の片方は、がっちりと私の胸を掴んでいた。混乱しているのか、彼の反応はない。
「あの、事故だから気にしなくていいし。ごめん、早く退いてほし」
言い終わらないうちに、また視界が反転し、背中に痛みを感じた。ぱしゃりとまだ残っている水に髪が浸る。冷たい。
我妻君の手によって押し倒されていたのが、遅れてわかった。動けないように、そのまま腕を抑えられている。いったい、どうしたことか。
彼の顔を見上げるといつもの落ち着きのない顔つきとは違い、どこかピリッとした空気を纏っている。眼光は真直ぐに私に注がれ、その視線が痛い。